色のいろいろ

カンディンスキーと色彩

カンディンスキーと色彩

Kandinsky
絵画と採用されている色彩について、
幾人かの画家にスポットをあてながら
理解を深めていきたいと思います。

第1回目は、カンディンスキー。
まずはカンディンスキーがどんな画家なのか、
からみてきます。

カンディンスキーの人生ストーリー

ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)
は、1866年から1944年に生存したロシア出身の画家です。
1928年にドイツ国籍、1939年にはフランス国籍も
取得しています。

モスクワ大学で法律と政治経済を学びました。
フランス印象派展で見たモネの「積藁」が放つ
色彩の力強さに大きなインパクトを受け、
30歳の頃に、ミュンヘンで画家を目指して
絵の勉強を本格的に始めます。

1911年、フランツ・マルクとともに、
「青騎士」(der Blaue Reiter)を結成しました。
「青騎士」は、芸術の年刊雑誌と企画展が
メインの活動でしたが、この時期の芸術運動
となりました。

「青騎士」の理念は、

・「形象(フォルム)」へのこだわりを捨てて、
すべての芸術に共通する根底を明らかにすること。
「芸術表現の多様性」を伝えようとしました。

著書『芸術における精神的なもの』(1911年)

の中でカンディンスキーは理論的基礎を固めます。
人間はみな芸術を通してともに結びつけられる
内的および外的現実体験を持っており、
カンディンスキーはそれを、芸術の「内的必然性
と呼び、芸術作品は内側から鑑賞者に語りかけ、
見る者はその声を聴く、と訴えました。

最初に抽象画を手掛けたのは1910年。
代表作の『コンポジション』シリーズ
は、ドイツ滞在時に描かれています。
「抽象表現主義」の創始者と言われる
存在になりました。
幾何学的な円や直線、四角などを用いた
抽象表現の絵が特徴です。

1922年からバウハウスで教官を務めます。
抽象的な形態と色彩をテーマに教鞭をとります。
その内容は

「点と線から面へ」カンディンスキー著

にまとめられています。

1933年に閉鎖されるまでバウハウスに務めました。
1944年 パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌで
その人生の幕を終えました。

「熱い抽象」ー「印象」「即興」「コンポジション」

カンディンスキーが抽象表現に目覚めたキッカケは、
アトリエで見つけた、何が描かれているのかわからないが
とても美しい絵が、実は、自分の描いた絵が横向きになって
いただけだった、という体験をしてから、
何が描かれているかは本質ではない、と気づき、
抽象表現の可能性を見出しました。
普遍的な本質は色彩にあり、抽象的な形態と
色彩のもつ訴求力を表現のキーという確信を
もつようになりました。

著書『芸術における精神的なもの』(1911年)
の中で、精神性の復権をとなえ、
「印象impression」:外面的な自然から受けた直接的な印象
「即興improvisation」:無意識的な精神の過程を表す内面的な自然の印象
「コンポジションcomposition」:心の内面で練り上げられた表現
の3段階で段階的に抽象化されると説明しています。

3つのタイトルがついたシリーズが描かれています。

印象Ⅲ(コンサート)」1911年

カンディンスキーがアルノルト シェーンベルク
音楽と芸術理論に初めて触れた感動を描いた作品
と言われています。
黒:グランドピアノ
破線・フック状の線:聴衆
黄色:音楽
音楽(黄色)が、空間をただよい、
聴衆を包んでいく様子が見えます。

「即興Ⅳ」1910年

絵は帆船が襲われるシーンが描かれています。
血に濡れた赤い月、黄色い帆の船、オールを漕ぐ
人々など、抽象化されているが、対象が見てとれます。

コンポジションⅦ」1913年

最後の審判がテーマとして描かれています。
が、具体的な形はなくなっています。
抽象化が深化し、色彩の宇宙がうねりをもって
訴えかけてきます。
カンディンスキーにとって最も大切な
魂の叫びともとれる作品となっています。

色彩の共感覚性

music
カンディンスキーは、音楽に色彩を見る
体験をしています。

たとえば、
夕景の赤:チューバのような響き、力強い太鼓の響き
黄色:トランペットのファンファーレの音色
明るい青:フルートの音色

というように、色を楽器の音色にたとえて表現しています。
音楽と色彩表現を共鳴させることで、「絵画を作曲」
しようとしたのです。
創作の基本を「内的必然性」におき、目に見えないものを
共感覚的に捉えて色彩に変換して表現しました。
カンディンスキーの絵は、色と音がつながっており、
目で聴く音楽のようになっています。

「黄・赤・青」1925年

黄色:長方形
赤:十字
青:円
そこに黒く強い直線と曲線が描かれています。
まるでカラフルなチェス盤、といった様々な
図形模様が複雑かつ洗練された配置で描かれています。
図形の色と配置によって、精神的内面の感情が
表現されおり、見るものを深い内面世界へ誘います。
カンディンスキーがバウハウスで説いた、
心理学の要素を取り入れた新しい美術理論を
体現するような作品です。

まとめ

抽象表現主義の創設者の試み、
見えたもの、聞こえたものを
抽象的な図形と色彩で表現した作品には
深い精神性、純度の高さを感じますね。

次は、カンディンスキーが「熱い抽象」
といわれたのとは対照的に、
「冷たい抽象」といわれたモンドリアン
取り上げます。

 

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